契約電力の決め方|高圧(500kW未満・以上)の基本料金を下げる方法まとめ
「契約電力を下げる方法を知りたい」
「基本料金ってなぜこんなに高いの?」
「節電しているのに、思ったほど効果がでない…」
などとお悩みではありませんか?
節電はコスト管理をおこなう上で大事なことですが、それによって現場で働くスタッフの方が疲弊したり、ストレスを抱えたりと、職場環境が悪化すれば、元も子もありません。
節電を効果的におこない、電気代を見直すためにも、契約電力の仕組みを理解することは欠かせないでしょう。
この記事では、契約電力の基礎知識から決め方・下げる方法に至るまで、詳しく解説しています。
契約電力について理解を深め、貴社の電気代削減に役立てていただけると幸いです。
目次
まずは基本料金と契約電力の関係を理解しよう
「契約電力」について解説する前に、まずは契約電力が電気料金のどの要素に構成されるのかをお伝えします。
大手電力会社の電気料金の構成を以下に記載します。
(注)大手電力会社とは、北海道電力・東北電力・東京電力・北陸電力・中部電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力・沖縄電力の旧一般電気事業者10社のこと

| 【高圧電力の電気料金の構成】 電気料金=基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再生可能エネルギー賦課金 |
上記のうち、契約電力は基本料金の内訳に含まれています。
基本料金の計算式は以下です。
| 【高圧電力の基本料金の計算式】 基本料金=基本料金単価(円)×契約電力(kW)×力率(%) |
上記計算式から読み取れるとおり、契約電力のkW数を下げることによって、電気代の基本料金を見直すことができます。
契約電力の調べ方
契約電力を確認したいときは、毎月届く電気料金の明細書(検針票)をチェックしましょう。
そのなかに契約電力の容量がされています。
手元に明細書がない場合は、東京電力や関西電力といった契約先の電力会社のWEBサイトからマイページにログインして明細データを確認しましょう。
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契約電力の決め方
契約電力とは、電力会社との契約上、使用できる最大電力のことをいいます。
なお、契約電力のkW数によって契約電力の決め方は異なるため、注意しなくてはなりません。
契約電力の決め方について、高圧小口(50~500kW)は「実量制」を、高圧大口と特別高圧は「協議制」を採用しています。
以下の表をご覧ください。
| 高圧 | 小口 | 50~500kW | 実量制 |
| 大口 | 500~2,000kW | 協議制 | |
| 特別高圧 | 2,000kW~ | ||
「実量制」と「協議制」の詳細は以下の通りです。
実量制(契約電力500kW未満の決め方)
上述したとおり、契約電力500kW未満の「高圧小口」の場合、契約電力の決定方法は「実量制」です。
実量制とは、直近1月の最大需要電力と前11月の最大需要電力のうち、いずれか大きい値を算出し、契約電力として採用する方式です。
| 最大需要電力の決め方
まず、最大需要電力とは、30分ごとの平均使用電力のうち、月間で最も大きい値のことをいいます。 1日24時間を30分ごとに区切ると、48個のコマに分かれます。 この1,440個のコマのなかで、30分ごとの平均電力使用量がもっとも多かったコマの値が、その月の最大使用電力量(ピーク値)になります。
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例えば、直近12ヶ月のなかで最大需要電力が最も高い月が2月の場合、2月の数値が向こう1年にわたっての契約電力(370kW)になります。

電気代の基本料金を抑えたい方は、30分ごとの平均使用電力量が契約電力を超えないように節電する必要があります。
30分ごとの最大需要電力が変わらなければ、日々の電力使用量をどれだけ節約しても、契約電力は下がらないため、注意しなくてはなりません。
協議制(契約電力500kW以上の決め方)
協議制は、契約電力が500kW以上の高圧大口・特別高圧が対象となります。
協議制とは、実量制と同じく、まずは直近12カ月の最大需要電力を算出したのち、電力会社との協議によって基本料金を決定する方式です。
電力会社とは、年に1度の契約更新時期に「使用する負荷設備」「受電設備の内容「同一業種の負荷率」など、法人ごとの状況を踏まえた上で協議をおこない、最終的に契約電力が決定されます。
なお、月ごとのデマンド値が契約電力を超えた場合、実量制とは違って、通常より割増しの違約金を電力会社に支払うことになります。
契約電力を下げる方法
前述のとおり、契約電力は直近12ヶ月間のうちのピーク値である最大需要電力によって決まります。
そのため、契約電力を下げる方法は、最大需要電力を抑えることが有効です。
ではどのような手段があるのでしょうか。
最大需要電力を削減する際に理解しておきたいのが、 ピークカット・ピークシフトの2つの考え方です。
それぞれ説明します。
ピークカット
ピークカットとは、ピーク時の電力使用量を抑える取り組みのことです。
ピークカットのイメージ図は以下です。

図を見て分かるように、直近12ヶ月間の最大需要電力(最大デマンド値)を抑えることで、契約電力を下げる効果が期待できる施策です。
契約電力が下がることによって、基本料金の削減につなげることができます。
あらためてになりますが、電気代の基本料金の計算式は以下のとおりです。
| 【高圧電力の基本料金の計算式】 基本料金=基本料金単価(円)×契約電力(kW)×力率(%) |
東京電力の業務用電力(基本料金単価:1,890円00銭)を例に、コスト削減額を計算してみましょう。
ピークカットの取り組みにより、契約電力が30kW下がったとします。
力率が変わらない前提であれば、月に56,700円の削減(1,890円00銭×30kW)となります。
また、年間を通じて契約電力が下がった値で推移すれば、680,400円もの削減が実現するため、効果は非常に大きいです。
まだ取り組んでいない方は是非検討してみてはいかがでしょうか。
ピークカットにはデマンドコントロールでの制御が有効
では、実際にピークカットを実施するためには、どのような手段があるのでしょうか。
契約電力を下げるためによく使われる、代表的な装置はデマンドコントロールです。
デマンドコントロールとは、電気の使用量を可視化し、設定した値を超えないよう、警告をおこなったり、電気機器や設備の自動制御を行う装置のことです。
電力使用量を常時監視し、無駄な電力消費を抑えることで電気代削減につながります。
なお、デマンドコントロールには2つの方法があります。
- デマンドコントロールシステム
- デマンド監視装置
それぞれについて見ていきましょう。
デマンドコントロールシステムの特徴
デマンドコントロールシステムは、設定した目標デマンド値を超過しないよう、空調設備や電気機器を管理し、電源を自動でオフにしたり、出力を弱めてくれる装置のことです。
デマンドコントロールシステムの最も大きなメリットは、電気機器の制御を自動でおこなってくれる点です。自動制御のため、人的ミスが発生しません。
また、電力消費の計測と記録を自動でおこなってくれることもメリットに挙げられます。
一方で、デマンドコントロールシステムのデメリットは、導入コストの高さと、労働環境の快適性に影響を及ぼす点です。
一般的に、デマンドコントロールシステムはデマンド監視装置と比べて導入コストが高い傾向にあります。
また、機器の自動制御によって、暑い時期にエアコンが急停止することで社員の方の不満をやストレスを与える可能性もあります。
デマンド監視装置の特徴
デマンド監視装置とは、事前に設定した目標デマンド値を超えそうになったとき、警報やメール通知によって、警告してくれる装置です。
なお、デマンドコントロールシステムのように、電気機器の自動制御までおこなう装置ではないため、警告をもとに手動で調整する必要があります。
デマンド監視装置のメリットは、デマンドコントロールシステムと比べて導入コストが安い点です。
また、自分たちで機器の調整をおこなうことから、従業員に対して節電の意識づけをおこなうことができます。
デメリットは、機器の操作を手動でおこなう必要がある点と、デマンドの計測と制御のタイミングにズレが生じるため、自動制御と比べて効率が劣る点です。
デマンドコントロールシステムも監視装置のいずれも、契約電力を下げるために有効な打ち手になりますが、それぞれのメリットとデメリットが自社にとってどのように作用するかをよく考えて取り組みましょう。
ピークシフト
ピークシフトとは、電力の使用量が多い時間帯から少ない時間帯にシフトさせて、使用電力を平準化させる方法です。
イメージ図は以下です。

電気使用量が多い「山」の部分を、「谷」の部分に移動する取り組みのことです。
ピークシフトによって年間の電気使用量は変わらずとも、電力使用のピーク値をシフトさせることで抑制できれば、契約電力を下げて基本料金の削減につなげることができるのです。
ピークシフトには蓄電池の導入が有効
蓄電池とは. 電気を蓄えられる機能を持った充電装置のことです。
その蓄電池を使い、電気使用量の少ない夜間や早朝に電気を貯めておき、それを使用量の多い昼間に放電して使うことで、電力会社から購入する電気を減らしてピーク時の電力が削減できるのです。
ピークシフトを実施するにしても、工場設備の稼働時間帯を日中から夜間に移したり、出勤日を平日から土日祝日に変更する、といった取り組みは容易ではありません。
自治体によっては補助金が出るため、ピークシフトの取り組みを検討する際、まずは蓄電池の導入を考えてみても良いかもしれません。
無料で電気代の基本料金を見直せる方法
最もおすすめなのは、新電力への切り替えにより基本料金単価を下げる方法です。
契約電力を下げるのは機器の導入が必要ですが、新電力への切り替えは無料でおこなえます。
2016年に電力の小売全面自由化により、700社以上の電力会社から料金プランを選択できるようになりました。
例えば、東京電力の業務用電力の基本料金単価(2024年4月1日以降契約分)は「1,890円00銭」ですが、電力会社の中には「653円87銭(2024年)」で提供している契約メニューもあります。
仮に契約電力が200kW、力率100%の場合、東京電力は321,300円/月に対して、新電力のプランだと111,157円/月となり、毎月210,143円を削減することが可能です。
また、電力会社を切り替えると、基本料金のみならず電力量料金の削減が見込めるメニューもあります。
力率改善や契約電力を下げる方法はコストをかける必要がありますが、電力会社の切替は費用がかかりません。
まずはお金をかけずに見直せるところから着手してみてはいかがでしょうか。
市場連動型プランなら電力量料金も下げられる可能性あり
ここまで高圧電力の基本料金を下げる方法について説明しました。
電気代の値上がりリスクを避けたい法人が知っておきたいのが「市場連動型プラン」です。
市場連動型プランとは、30分ごとに電力量料金の単価が変動するプランです。
市場連動型プランでは「JEPX」という電力の卸市場から仕入れた電気を供給します。
JEPXの価格は「市場価格」といい、需要と供給に応じて30分ごとに価格が変動する仕組みとなっています。
市場連動型プランの料金の内訳は以下です。

電気料金=基本料金+電力量料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金
市場連動型プランは、JEPXの市場価格に電力会社の管理費を上乗せしたものが電力量料金になります。下図のとおり、仕入れ価格に基づいて料金プランが設計されています。

市場連動型プランを、大手電力会社の一般的な料金プラン(燃料調整費型プラン)と比較した場合のメリットは下記の3点です。
1.料金内訳が明瞭なので透明性が高い
燃料調整費型プランは料金内訳が不透明な上、突然の値上げになることも少なくありません。
市場連動型プランの料金体系は市場価格と管理費が明確に分かれているため、不透明な値上げリスクが低いです。
2.倒産・事業撤退リスクが低い
燃料調整費型プランとは異なり、市場連動型プランは料金設定が仕入れ値に基づいてるため、燃料費高騰の影響を受けることはありません。
3.市場価格が下がれば料金単価が安くなる
燃料調整費型プランは料金単価が24時間固定される一方で、市場連動型プランは市場価格に応じて電気代の単価が変動するため、単価を大幅に下げられる可能性があります。
もちろん、市場価格が高値をつけ、市場連動型プランの単価が燃料調整費型プランよりも高くなるリスクもあります。
しかし燃料費が高騰していても、太陽光発電の導入量が増える昼間の市場価格は最安値の0.01円/kWhをつけることもあり、電気代を安くできる可能性があります。
ちなみに0.01円/kWhの最安値をつける時間帯は年々増加しています。
特に、日照条件が良い九州エリアでは、市場価格が0.01円/kWhの時間が2023年は年1174時間となり、年間の総時間数(8,760時間)の約13%に達しています。

JEPXの市場価格は、天候が悪い日や夜間などの太陽光発電ができない時間帯や、夏冬の電力需要が増える時期は高くなる場合があります。そのため、市場価格が高騰すれば、市場連動型プランが燃料調整費型プランよりも高くなるリスクは当然考えられます。
しかし、0.01円/kWhとなる時間帯が増えているため、特に昼間の稼働が多いオフィス・工場では電気代を下げられる可能性が高いといえます。以下は市場価格が0.01円/kWhを記録した際の、市場連動型プランと燃料調整費型プランそれぞれの平均価格のイメージ図です。

市場連動型プランは、市場価格に電力会社の経費が上乗せされるケースが多いため、電力会社が固定単価の引き上げを発表したり、突然倒産・撤退したりするリスクはほとんどありません。
「電気代を安くしたい」「電力会社との契約で悩みたくない」法人は、市場連動型プランを検討するのも1つの手です。一度、見積もりをとって比較することをおすすめします。




さらに、お客様へ電力会社から直接連絡が入ることはなく、煩わしいやり取りの手間も不要です。
