JEPXとは?仕組み・市場価格の決まり方から市場連動型プランの注意点までわかりやすく解説
「JEPXとはどのような市場なの?」
「市場連動型プランに切り替えて、本当に電気代は下がるの?」
「価格が変動するなら、逆に高くなるリスクはないのだろうか」
電気代の高騰が続く中、こうした不安を感じている企業は少なくありません。
近年、電気料金の見直し策として、大手電力会社が提供する一般的な料金プランから、市場連動型プランへ切り替える企業が増えています。
市場連動型プランでは、電力の調達価格がJEPX(日本卸電力取引所)の市場価格と連動する点が大きな特徴です。
ただし、JEPXは「電気代を直接決める市場」ではありません。
JEPXで決まるのはあくまで電力会社が電気を調達する際の価格であり、JEPXの価格が安いからといって、電気料金が必ず安くなるわけではありません。
また、市場連動型プランは、すべての企業にとって有利なプランでもありません。
電力の使用時間帯や季節変動によっては、思ったほど効果が出なかったり、価格変動が負担になるケースもあります。
そこで本記事では、JEPXの役割や市場価格の決まり方を解説するとともに、市場連動型プランを検討する際に知っておくべき注意点や、どのような企業に向いているのかについても、わかりやすく説明します。
目次
JEPX(日本卸電力取引所)の役割とは
JEPX(日本卸電力取引所)とは、日本で唯一、電力を売買できる市場のことをいいます。
なお、JEPXは「Japan Electric Power Exchange」の略称で、読み方は「ジェーイーピーエックス」「ジェイペックス」です。
JEPXでは、発電事業者が電力を売り、小売電気事業者などが必要な電力を買い取ります。

2000年に始まった電力自由化により、新電力会社が電力の小売事業に新規参入したものの、その大半は自社発電所を持っていませんでした。
そのため、卸電力を扱う市場として2003年にJEPXが誕生し、2005年から取引を開始しました。
関連記事:【高圧】新電力とは?仕組み・メリットデメリットをわかりやすく解説
JEPXは「電気代を決める市場」ではなく「調達価格を決める市場」
JEPXは、電力会社同士が電気を売買する卸市場です。
需要家(企業・店舗)が直接電気を買う市場ではありません。
市場連動型プランでは、電力会社がJEPXで調達した電気を、一定のルールで需要家に販売します。
そのため、実際の電気料金は次のような構造になります。
- JEPXの市場価格
- 電力会社の手数料や需給管理費
- 託送料金
- 再エネ賦課金
- 容量拠出金
JEPX価格が安い時間帯があっても、これらがゼロになるわけではない点は、事前に理解しておく必要があります。
JEPX(日本卸電力取引所)の取引市場は7種類
JEPXの取引市場は7つあります。
それぞれの市場の特徴、取引期間、価格の決定方法などを説明します。
①スポット市場(一日前市場)とは
スポット市場は、JEPXで最も取引高が多いメインの市場です。
市場連動型プランは主にスポット市場での取引により電気を供給します。翌日分の電力取引を行うことから、一日前市場ともいわれます。
スポット市場は、1日を30分単位の合計48コマに区切り、1コマごとに売買がおこなわれます。
(出典:JEPX「日本卸電力取引所取引ガイド」)
そしてスポット市場の取引価格は「ブラインド・シングルプライス・オークション方式」で決定します。
(出典:JEPX「卸電力取引所の仕組みと取引の現状」)
このオークション方式では、発電事業者(電力の売り手)は、48コマ分の発電できる電力量と価格を、取引システムを通じて入札します。
一方で、小売事業者(買い手)は48コマ分の買いたい電力量と価格を同じく入札します。
48コマのそれぞれにおいて、供給曲線と需要曲線が一致したところが約定価格となります。
シングルプライス(単一価格)オークションの名の通り、買い手は10円/kWhで買いたくても、売り手は20円/kWhで売りたくても、約定価格が15円/kWhの場合、15円/kWhで取引しなければなりません。
なお、スポット市場で翌日分の取引は、前日の午前10時までに入札する必要があります。
②当日市場(時間前市場)とは
当日市場(時間前市場)は、スポット市場取引で足りない分を取引する市場のことです。
スポット市場は翌日分の電気の取引をしますが、気温や天候の変化により需要量が増加したり、一方で発電所が急停止するなどで供給量が減少する場合があります。
そのようなときに追加の取引を行うために利用されます。
当日市場は、24時間365日開設されており、電気を受け渡す1時間前まで取引ができます。
例えば、13時~13時30分までの1コマで使う電力であれば、当日の12時まで取引が可能です。
スポット市場と同じく、1日を48コマに分割した30分単位で電力が取引され、価格はザラ場取引で決まります。
ザラ場取引とは、売り注文と買い注文の値段が一致したときに売買が成立する取引のことをいいます。また、値段が同じであれば注文が早いものが優先されるオークション方式がとられています。
③先渡市場とは
先渡市場とは、将来必要となる電気を事前に確保するための市場のことです。
この市場では1週間単位、1ヵ月単位、1年単位の3種類の電力取引がおこなえます。
そして、取引は全日0~24時までの「24時間型」と、平日昼間8~18時の「昼間型」にわかれます。※年間商品は昼間型はない
先渡市場のメリットは、電気を前もって確保できるため、将来の価格変動リスクを抑えることができる点です。リスクヘッジのために利用されます。
先渡市場はザラ場取引がおこなわれ、売り注文と買い注文の値段が一致したときに売買が成立します。
④分散型・グリーン売電市場とは
分散型・グリーン売電市場とは、太陽光発電や風力発電をはじめとした再生可能エネルギーやコージェネレーション発電設備でつくられた電気を販売できる市場のことです。
JEPXの会員でなければ電気を売れないスポット市場や当日市場とは違い、個人や企業も市場に参加し、自家発電した小口の余剰電力を販売することができます。※ただし、電気を買えるのはJEPXの会員だけです。
なお、この市場は日本卸電力取引所が電力を買い取っているわけではなく、取引の場を提供するだけです。そのため、売買契約は当事者間で結ばれます。
最低取引単位(1,000kWh以上)の下限がなく、販売量や販売価格などの条件を任意で設定できます。買い手が条件を提示し、最も条件のいいものが落札されます。
⑤ベースロード市場とは
ベースロード市場とは、コストが安く、安定して発電できる大規模電力(ベースロード電源)を取引するための市場のことです。
ベースロード電源に該当するのは、石炭火力や水力発電、原子力発電、地熱発電などです。
発電コストが安価で、昼夜を問わず多くの電気が安定して作れるため、エネルギー供給の基礎をなす電源とみなされています。
発電するには大規模な発電所の建設が必要なため、大手電力会社がベースロード電源を保有・独占してしており、新電力が参入しようとしても障壁がありました。そこで2019年7月にベースロード市場を創設したため、新電力会社も入手しやすくなったのです。
現在は、7月・9月・11月・1月の年4回、ベースロード電源の取引が実施されています。取引単位は1年間で、シングルプライス・オークション方式で価格が決定します。
⑥非化石価値取引市場とは
非化石価値取引市場とは、非化石電源が持つ「環境価値」を取引する市場のことです。
非化石電源とは、CO2をはじめとした温室効果ガスを排出しない、再生可能エネルギー・大規模水力・原子力による発電のことをいいます。
この非化石電源は「環境にやさしい」という付加価値を持ちます。その付加価値のことを「環境価値」といい、環境価値を証明書として発行したものを「非化石証書」といいます。
非化石証書を購入することで「自社で使用する電気はCO2排出量がゼロなので地球にやさしい」という証明になります。

非化石価値取引市場は2018年から始まりましたが、2021年に改編され、以下の2つの市場に分かれました。
- 再エネ価値取引市場
- 高度化法義務達成市場
再エネ価値取引市場
再エネ価値取引市場とは、再生可能エネルギーで作った電力の非化石証書(=FIT非化石証書)を扱う市場のことです。
この市場で取り扱うFIT非化石証書は、どの再エネ発電所で作られたのか、発電所の情報を実証することができます。
高度化法義務達成市場
高度化法義務達成市場とは、再生可能エネルギー以外で作った電気の非化石証書を扱う市場のことです。
水力やFIT期間が終了した電源でつくった電気は「非FIT(再エネ指定)非化石証書」、原子力で作った電気は「非FIT(指定なし)非化石証書」といいます。
小売電気事業者には、2030年度までに非化石電源による電力の販売比率を44%に上げることが義務付けられており、その目的に特化して作られた市場です。
関連記事:非化石証書とは|仕組みや企業が導入するメリット・注意点を解説
⑦間接送電権取引市場
間接送電権取引市場とは、電力エリア間をまたぐときの送電価格の差を解消するために設けられた市場のことです。
エリアを越えて電力の取引をおこなう場合、各エリアで取引する電力に価格差が出ると、どちらかに損が生じてしまいます(価格差はJEPXの取り分)。そこで、間接送電権を市場で安く入手しておくと、価格差を減らすことができます。
シングルプライス・オークション方式で売買がおこなわれ、4~5週間分の週間商品を取引します。
JEPXの市場価格の決まり方
JEPXで最も取引高が多いスポット市場では、1日を30分単位の合計48コマに区切り、1コマごとに売買がおこなわれて市場価格(約定価格)が決まります。
売り手と買い手の入札が一致したところで価格決定しますが、下記の5つの要素に影響を受けます。
①燃料費
市場価格は火力燃料(石炭・原油・天然ガス)との相関が強いため、燃料価格が安ければ市場価格は下がり、高ければ上がる傾向がある。
②需給バランス
電力需給に余裕があれば市場価格は下がる。酷暑や寒波の影響により、供給量に対して需要が高まったり、発電量が減るなどして需給がひっ迫すれば上がる場合が多い。
③季節
春秋は空調の冷暖房需要が伸びないため市場価格が下がり、夏冬は需要が増えるため上がる場合が多い。
④天候
晴れの日は太陽光発電量が増えるため市場価格が下がり、雨や曇りの日は上がる場合が多い。
⑤時間帯
昼間(特に8時~14時)は太陽光発電量が増えるため市場価格が下がり、夜間は上がる場合が多い。
なお、JEPXでは、北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州の9つのエリアで取引が行われ、地域ごとに市場価格が異なります。全国一律の価格ではありません。
下図は2024年4月17日の関西エリアのスポット価格です。春で電力需給に余裕があり、晴天で太陽光発電が増加したため、7時~15時の昼間時間は0.01円/kWhをつけています。

一方で、雨や曇りの日は太陽光発電の発電量が増えないため、市場価格は上がる場合があります。
同日の東京エリアのスポット価格の推移を見てみましょう。2024年4月17日の7時~15時の時間帯は8.83円/kWh~10.49円/kWhで推移しています。

その日、関東地方は雨や曇りの地域が多かったため、太陽光発電の発電量があまりなかったことも影響しているでしょう。
JEPX価格が安くても電気代が0円になるわけではない
JEPXでは、天候や需給状況によって、0.01円/kWhという非常に低い価格がつく時間帯があります。
ただし、これはあくまで卸電力の調達価格です。
実際の電気料金には、前述した各種費用が加算されます。
そのため、「JEPX価格が0.01円/kWh = 電気料金も0.01円/kWh」というわけではありません。
市場連動型プランを検討する際は、「JEPX価格に何が上乗せされるのか」「上乗せ条件は固定か、変動するのか」まで確認することが重要です。
2022年以降の卸電力市場の動向
直近の市場価格の推移と動向について解説します。
2022年の市場動向
2022年のロシアによるウクライナ侵攻の影響により、燃料価格が高騰しました。
ロシアは2020年度、天然ガス輸出量は世界第1位、石油輸出量は第2位、石炭輸出量第3位の資源大国です。これらの資源の輸出制限をおこなったことにより、世界的にエネルギー供給量が激減しました。
さらに日本では、2022年3月頃から円安が急激に進み、4月下旬には1ドル130円台に突入、10月には150円を突破。円相場の円安進行もあり燃料の輸入費用が高止まりしました。
それにより、東京電力や関西電力といった大手電力会社は軒並み数百〜数千億円規模の赤字を計上。

大手電力会社が、高圧電力をはじめとした料金メニューの燃料費調整額の上限撤廃を発表したことも話題になりました。
これまでは燃料費が高騰したとしても燃料費調整額に上限が設けられていたため、その影響は限定的でした。ところが上限を撤廃したことにより、燃料費の価格変動が反映されることになったのです。
また、燃料価格と相関が強いJEPXの市場価格も上昇しました。
その影響により、新電力会社の撤退や倒産が相次ぎました。
当時、新電力が需要家向けに販売していた料金メニューの多くは、市場価格が安く、値上がりしない前提で作られていました。
そのため、市場価格が料金単価を越えて高値をつけた場合、その高騰分を電気料金に転嫁できず、逆ザヤが起きる構造になっていました。
市場連動型プランのデメリットと注意点
市場連動型プランは、価格が安い時間帯を活かせる一方で、以下のような注意点もあります。
- 夏冬の需給逼迫時は価格が急上昇する可能性がある
- 天候により日々の価格変動が大きい
- 月々の電気代が読みづらくなる
- 契約内容によっては上限単価が設定されていない
特に、電力使用量が多い企業ほど、価格変動の影響を受けやすくなります。
そのため、「市場連動型=必ず安い」と考えて切り替えるのは危険です。
2023~2024年の市場動向
2023年に入り、JEPXの市場価格は徐々に落ち着きを取り戻しました。原油・天然ガス・石炭などの燃料価格が下落局面に入ったことがその理由に挙げられます。
一方で、長引く燃料価格の高騰への対応に苦慮し、2023年4月1日には東京電力や関西電力といった大手電力会社が一斉に高圧電力の値上げを行いました。
また、新電力会社の中には電力プランの見直しをおこない、「市場連動型プラン」の提供を開始し始めたのもこの頃です。
長期的に見てJEPXは電気料金にどう影響するのか
ここまで、JEPXの仕組みや市場価格の決まり方、市場動向について解説してきました。
ここでは、従来の料金プランと比較した場合、JEPXが長期的に電気料金へどのような影響を与えるのかを整理します。
大手電力会社が提供する一般的な標準メニューは、調達電源の多くを石炭や天然ガスなどの火力発電に依存しています。
これらの燃料は、2050年に向けて価格が上昇するとの予測もあり、実際に日本の電源構成の約7割を火力発電が占めていることから、燃料価格の上昇は電気料金の値上げに直結しやすい構造になっています。

(出典:企業 省エネ・CO2削減の教科書「EIAによる石炭価格予測」「EIAによる天然ガス価格予測」)
天然ガスと石炭による火力発電は、日本の電源構成の7割を占めているため、電気料金の値上げにも直結します。
一方で、JEPXの長期的な価格動向を考えるうえで欠かせないのが、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた国の方針です。
日本では、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標のもと、再生可能エネルギーの導入が進められています。
その結果、再生可能エネルギーの電源構成比は年々高まり、将来的には火力発電の割合が低下していく見通しです。

(出典:資源エネルギー庁「日本における再エネ導入の推移」)
再エネ比率が高まることで、JEPX市場価格と燃料価格の相関は徐々に弱まり、燃料価格高騰の影響を受けにくくなる可能性があります。
実際、太陽光発電の導入拡大により、JEPXの市場価格が0.01円/kWhとなる時間帯は増加傾向にあります。
特に日照条件の良い九州エリアでは、昼間の市場価格が極端に低下するケースも珍しくありません。

ただし、JEPXの市場価格は常に安定しているわけではありません。
天候不良による発電量低下や、夜間・夏冬の需要増加時には価格が高騰する可能性もあり、市場連動型プランが標準メニューより割高になるリスクは存在します。
そのため、市場連動型プランは、企業の電力使用状況によって向き不向きが明確に分かれます。
市場連動型プランが向いている企業・向いていない企業
市場連動型プランは、企業の電力使用パターンによって向き不向きがはっきり分かれます。
向いている企業の例
- 昼間の稼働が多いオフィス
- 太陽光発電量が増える時間帯に電力使用が集中している工場
- 季節による使用量の変動が比較的少ない企業
向いていない企業の例
- 夜間や早朝の稼働が中心の工場
- 夏冬に電力使用が大きく偏る業態
- 電気料金を固定費として管理したい企業
自社の稼働時間帯や使用量を把握せずに選ぶと、期待した効果が出ない可能性があります。
市場連動型が向いていない企業は、市場価格が高い時間帯に使用していたり、負荷率が高い企業が当てはまります。
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市場連動型プランは「万能な電気料金プラン」ではない
市場連動型プランは、条件が合えば電気代を下げられる可能性がある一方で、すべての企業に適しているわけではありません。
重要なのは、
- 自社の電力使用実態
- 価格変動リスクをどこまで許容できるか
- 固定単価と比較した場合のメリット・デメリット
を整理したうえで判断することです。
そのため、市場連動型プランを検討する際は、現在の契約内容とあわせて複数プランを比較することをおすすめします。
関連記事:【法人・高圧】市場連動型ではない電力会社30社比較!電気代高騰リスクを抑える固定単価プランをご紹介!



さらに、お客様へ電力会社から直接連絡が入ることはなく、煩わしいやり取りの手間も不要です。
