非化石証書とは|仕組みや企業が導入するメリット・注意点を解説
脱炭素やSDGsの取り組みが進む中、企業は環境に配慮した事業活動が求められています。
「非化石証書」はそうした取り組みの中で登場する重要なワードのひとつです。
この記事では、非化石証書の役割や仕組み、メリット・デメリット、種類・価格、購入方法についてわかりやすく解説します。
なお、2024年8月に非化石証書に関する取引ルールは大きく改定がおこなわれました。
ここでは最新の状況についても詳しくお伝えします。
目次
非化石証書とは?
非化石証書とは、再生可能エネルギーなどの非化石電源が持つ「環境価値」を証書化したものです。
簡潔に言うと、電気をつくる際にCO2を排出していないという証明書のことです。
非化石電源とは、太陽光や風力・大型水力・地熱・バイオマス・原子力といったCO2を排出しない発電方法のことをいいます。それに対し、石油や石炭・天然ガスなどCO2を排出する発電方法を化石電源と呼びます。
非化石電源は「環境にやさしい」という付加価値を持ちます。
その付加価値のことを「環境価値」といい、環境価値を証明書として発行したものを「非化石証書」といいます。
つまり、非化石証書は「自社で使用する電気はCO2排出量がゼロなので地球にやさしい」という証明になり、脱炭素に貢献していることを対外的にアピールできます。
非化石証書の仕組みとは
非化石電源が持つ「環境価値」を文書化して非化石証書にすることで、電気とは別に売買することが可能となります。
その仕組みをわかりやすく図で示すと以下のようになります。

非化石証書の取引は、2018年にJEPX(日本卸電力取引所)の「非化石価値取引市場」で始まりました。
設立当初、非化石証書の売買に参加できるのは発電事業者と電力会社だけでしたが、2021年に市場が改編されたことを機に、非化石証書の種類によっては一部の需要家も取引可能になりました。
関連記事:JEPXとは?仕組みと今後の見通しをわかりやすく解説
非化石証書とグリーン電力証書・J-クレジットとの違い
非化石証書と同様に環境価値のみを売買できる仕組みとして、「グリーン電力証書」と「J-クレジット」があります。それぞれの特徴と違いは下図のとおりです。

非化石証書の種類
非化石証書の仕組みについて先述しましたが、非化石証書は1つだけでなく以下の3種類があるため、注意しなくてはなりません。
- FIT非化石証書
- 非FIT非化石証書(再エネ指定あり)
- 非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
※FIT(Feed-in Tariff)とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定める価格で一定期間買い取る制度のことです。
ちなみに、環境にやさしい電気を選びたい場合は「FIT非化石証書」または「非FIT非化石証書(再エネ指定あり)」を選ぶ必要があります。
それぞれの非化石証書の違いや概要について説明します。
①FIT非化石証書
FIT非化石証書とは、FIT制度により買い取られた電気の「環境価値」に対して発行される証書です。
FIT制度を通じて買い取られた再生可能エネルギーの対象は、太陽光発電・風力発電・水力発電・地熱発電・バイオマス発電です。
②非FIT非化石証書(再エネ指定あり)
非FIT非化石証書(再エネ指定あり)とは、CO2を排出しない非化石電源のうち、以下2つのいずれかの条件に当てはまる再生可能エネルギーの環境価値を証書にしたものです。
- 非FIT:FIT制度の認定を受けていない電気
- 卒FIT:FIT制度の買取期間が終了したもの
非FIT非化石証書(再エネ指定あり)の対象は、大型水力発電や卒FITの再生可能エネルギーです。
2024年時点では、小売電気事業者(電力会社)・発電事業者だけが購入可能です。
しかし、今後は条件付きで需要家も購入が認められる予定となっています。
③非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)とは、非FITであり、なおかつ再生可能エネルギーではない電源を証書化したものです。
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の対象は、原子力発電やごみ発電です。
例えば原子力発電はCO2を排出しないものの、使用済み核燃料が発電の際に生じるため、再生可能エネルギーではありません。
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)も、現時点では小売電気事業者と発電事業者のみ購入できます。今後は条件付きで需要家の購入も認められる予定です。
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)は注意が必要
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)は当初、電源をトラッキングできませんでした。トラッキングとは、再生可能エネルギーの電気がつくられた発電所の所在地や電源種別などの情報を紐付けたものです。
ところが、JEPX(日本卸電力取引所)が2024年8月入札分より非化石価値取引のルールの改定をおこなったことにより現在ではトラッキング情報が付与されています。
なお、RE100への加盟を検討している場合は「FIT非化石証書」または「非FIT非化石証書(再エネ指定あり)」を購入する必要があります。
また先述したとおり、非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の電源には原子力発電も含まれています。原子力はCO2を排出しませんが、発電の際に使用済み核燃料が発生するため、環境負荷が大きいです。
非化石証書3種類のまとめ
ここまでで非化石証書3種類の詳細について解説しました。
それぞれの特徴を図にまとめると、以下のようになります。
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非化石証書を導入するメリット
企業が非化石証書を導入するメリットは以下の2点です。
- ESG経営の実現につながる
- RE100をはじめとした企業連合に加盟に利用できる
詳細を以下をご覧ください。
①ESG経営の実現につながる
ESG経営とは、環境(Environment)・社会(Society)・企業統治(Governance)という3つの要素を考慮して、社会的責任を果たしつつ長期的な成長を目指す経営手法のことをいいます。
将来、気候変動や生物多様性の危機といった環境問題が深刻化すると、事業活動に負の影響が生じる恐れがあります。
ESG経営は、目先の利益や評価ではなく、環境問題や社会問題の解決に向けて積極的に取り組む経営手法であることから、長期的な投資リスクを重視する機関投資家の関心を集められるというメリットがあります。
②RE100をはじめとした企業連合に加盟に利用できる
非化石証書を導入する2つ目のメリットは、対外的に「環境にやさしい電気を使用している」というアピールができる点です。
世界的なカーボンニュートラルの流れもあり、環境改善に取り組んでいることが倫理的な活動として評価され、企業イメージの向上や支持の獲得につながります。
非化石証書の発電元をトラッキングできれば、RE100の加盟条件を満たすこともでき、企業価値の向上に繋げることができます。
なお、米国のアップルは、スマートフォンの部品メーカーに対して脱炭素化の取り組みを毎年報告するよう求めるなど、企業の注目度も増しています。実際、当社顧客にも非化石証書を利用した電力プランでの見積もり依頼を希望する企業が増加しています。
既存取引の継続や新規顧客の獲得などといった取引の面でも、非化石証書は効果的といえるでしょう。
非化石証書を導入する注意点・デメリット
非化石証書の導入には注意すべき内容が3点あります。
- 非FIT非化石証書(再エネ指定なし)はトラッキングできない
- 購入のための費用が発生する
- 使用期限がある
非化石証書のデメリットを考慮した上で購入しましょう。
①非FIT非化石証書(再エネ指定なし)は注意が必要
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の対象は、原子力発電やごみ発電です。
例えば原子力発電はCO2を排出しないものの、使用済み核燃料が発電の際に生じるため、再生可能エネルギーではありません。
RE100への加盟を検討している場合は再生可能エネルギー使用率を100%にするという宣言をおこなう必要があるため、「FIT非化石証書」または「非FIT非化石証書(再エネ指定あり)」を購入しなくてはなりません。
②購入のための費用が発生する
非化石証書の購入には費用がかかります。
非化石証書は、JEPX(日本卸電力取引所)のオークションにより決定されますが、種類ごとに最低価格が決められています。2024年度における非化石証書のそれぞれの価格は以下のとおりです。
| 約定価格 | |
| FIT非化石証書 | 0.4円/kWh |
| 非FIT非化石証書(再エネ指定あり) | 0.6円/kWh |
| 非FIT非化石証書(再エネ指定なし) | 0.6円/kWh |
参考:JEPX(日本卸電力取引所)2024年第1回(8月30日約定分)
非化石証書の価格は電気使用量(kWh)に応じて計算されます。
例えば、FIT非化石証書を購入して100,000kWh/月を使用した場合は、電気代に40,000円/月を加算して支払う必要があります。
また、取引価格は入札によって変動します。2018年5月の第1回入札では平均1.30円kWhで約定しましたが、2022年度には0.30円/kWhまで下がっています。
③使用期限がある
非化石証書は、JEPX(日本卸電力取引所)の非化石価値取引市場で年4回(8月、11月、2月、5月)の入札により購入できます。
ただし、どの時期に購入した証書でも使用期限は「6月」のため注意しなくてはなりません。例えば5月に購入した証書は、購入後1か月ほどで使用期限を迎えることになります。
非化石証書の購入方法
前章では、非化石証書の購入は企業の価値向上に繋がることを説明しました。つづいては、非化石証書の購入方法を2点お伝えしていきます。
- 再エネ価値取引市場で購入する
- 非化石証書を利用した電力プランに乗り換える
それぞれの詳細を以下に記載します。
①再エネ価値取引市場で購入する
非化石証書の購入方法の1つ目が、企業が再エネ価値取引市場に参加し、非化石証書を購入することです。
2021年以降、条件を満たせば法人でも再エネ価値取引市場の取引に参加でき、FIT非化石証書を購入できるようになりました。
また購入を代理する専門業者を通じて市場取引に入札する方法もあります。
②非化石証書を利用した電力プランに乗り換える
購入方法2つ目が、非化石証書を利用した電力プランへの乗り換えです。
電力会社の中には自社で非化石証書を購入し、再生可能エネルギー100%の電力プランを提供している企業もあります。
環境価値のあるプランに切り替えるだけで、法人が使う電気は実質、再生可能エネルギー由来になります。市場取引に入札したり、専門業者に購入代行を依頼したりする手間や費用をかけることなく、CO2排出量の削減が可能になります。
非化石証書つき電力プランは電力アドバイザーズにご相談ください
電力アドバイザーズでは、法人の電気代削減と脱炭素化のサポートを完全無料でおこなっています。なお、電力会社700社の内、厳選した30社から最適な電力プランを紹介することが可能です。
2024年10月時点での電力プランのおすすめは「市場連動型プラン」です。
一般的なプランは料金単価が24時間固定される一方で、市場連動型プランは市場価格に応じて電気代の単価が変動するため、単価を大幅に下げられる可能性があります。
もちろん、市場価格が高値をつけ、市場連動型プランの単価が一般的な料金プランよりも高くなるリスクもあります。
しかし燃料費が高騰していても、太陽光発電の導入量が増える昼間の市場価格は最安値の0.01円/kWhをつけることもあり、電気代を安くできる可能性があります。
ちなみに0.01円/kWhの最安値をつける時間帯は年々増加しています。
特に、日照条件が良い九州エリアでは、市場価格が0.01円/kWhの時間が2023年は年1174時間となり、年間の総時間数(8,760時間)の約13%に達しています。

市場連動型プランは、午前~昼間の電気代が安くなる傾向にあるため、日中に電気をたくさん使用するオフィスや工場であれば、電気代が下がる可能性が高いといえます。
以下は、燃料調整費型プランと市場連動型プランの価格イメージ図は以下のとおりです。

「電気代を安くしたい」「電力会社との契約で悩みたくない」という企業は、市場連動型プランを検討してみてはいかがでしょうか。
一度、見積もりをとって比較することをおすすめします。





さらに、お客様へ電力会社から直接連絡が入ることはなく、煩わしいやり取りの手間も不要です。
