2025年版|容量拠出金で電気代はどう変わる?単価・計算方法・最適な見直しポイントを解説

「最近、電気代の請求に“容量拠出金”という項目が追加されている」
「見積もりを依頼したら来年の容量拠出金が高くなると言われた」

こうしたご相談が、法人・高圧電力をご利用の企業様から急増しています。

容量拠出金とは、2020年代に導入された新しい制度で、電力の安定供給を維持するため、発電所を維持するコストを全国の需要家が負担する仕組みのことです。

しかし、制度が複雑で分かりづらく、「なぜ電気代に追加されるのか?」「いくら支払う必要があるのか?」「削減できるのか?」と疑問を持つ企業が多く存在します。

本記事では、企業経営に直結する「容量拠出金」の仕組み・単価・計算方法・電気代への影響・削減対策を、専門知識を踏まえてわかりやすく整理しました。

容量拠出金とは?
企業の電気代に追加される新コスト

容量拠出金とは、電力を安定的に使えるようにするため、「必要なときに稼働できる発電所(電源)を確保する費用」を、電気を使う全国の需要家が分担して支払う仕組みのことです。

再エネの普及により、天候に左右されない火力発電などの“調整力のある電源”を維持する重要性が高まり、この維持コストが電気料金に上乗せされるようになりました。

この電源確保にかかる費用の一部が、国の制度である容量市場を通じて電力会社の負担として決まり、その結果が翌年度の容量拠出金として企業の電気代に反映されます。

容量拠出金の目的とは

容量拠出金の目的は、停電を防ぐために「必要な発電所を確保し続ける」ための費用を安定的に賄うことです。

再エネは天候に左右されるため、安定供給には火力などの“調整力の高い電源”が欠かせません。しかし火力発電の維持には多額のコストがかかり、電力事業者だけの負担では継続が難しくなっています。

そこで、社会全体で供給力を支える仕組みとして容量拠出金が導入されました。企業が支払うこの費用は、実際に使った電力量に応じて決まるため、使用量の多い事業所ほど影響が大きくなります。

容量市場との関係

容量市場とは、電気を安定して供給するために必要な“発電所を確保するコスト”を決めるための国の制度です。

まず国が「翌年にどれだけの発電能力が必要か」を見積もり、その電源をどの発電所が担うかを決める仕組みになっています。このときに発電所が提示する“発電力を維持するための費用”が応札され、その結果として決まった価格が翌年度の容量拠出金の基準になります。

この価格が高くなると電力会社の負担が増え、その分が企業の電気代に反映されます。容量市場の価格は、火力発電の老朽化や再エネ増加による調整力不足、需要ピークの上昇といった要因で変動しやすく、近年は高止まりが続いています。

そのため容量市場の結果は、高圧・特別高圧の企業の電気代に直結する重要な要素となっています。

容量拠出金の単価は上昇傾向にある

容量拠出金は制度開始以来、右肩上がりの状況が続いています。背景には、以下のような「電源維持コストの増加」があります。

  • 老朽火力の維持・更新費用の増加
  • 燃料調達コストの上昇
  • 脱炭素化に伴う環境投資の拡大

こうした負担増は容量市場の落札価格に反映され、特に東京・中部エリアでは過去最高水準まで価格が上昇しました。
また、再エネ比率の増加により“調整力のある電源”の必要性が高まったことも、市場価格を押し上げる要因です。

その結果、2024〜2025年度は容量拠出金が大きく跳ね上がり、高圧の工場やホテル・医療施設などでは年間数十万〜百万円規模の追加負担が発生しています。

このように「容量市場の価格が上がれば翌年の容量拠出金も上がる」という構造が続いているため、短期的に大きく下がる見通しは立っていません。

2026年以降に予想される追加負担

容量市場の見通しから、2026年以降も容量拠出金は高止まりすると考えられます。

最も大きな理由は、電源維持コストの増加が今後も続くためです。火力発電の老朽化は進み、再編・廃止により安定供給に必要な電源が不足しやすくなっています。また、猛暑・厳冬など気候変動の影響で電力需要のピークが増えることも、市場価格押し上げの要因になります。

(出典:経済産業省エネルギー庁「今後の供給⼒確保策について」

さらに、脱炭素政策により発電設備への環境対策投資が拡大し、再エネ比率の上昇によって天候に左右されないバックアップ電源の確保が求められるなど、発電側の負担は増え続けています。
特に2026〜2027年は老朽火力の大量引退が予測され、容量市場が高値になりやすい状況とされています。

こうした背景から、企業は容量拠出金の上昇を前提とし、基本料金・従量料金・燃料費調整額などを含めた“総額ベースでの電力契約見直し”を行うことが重要になります。

容量拠出金が上がったときの企業に与える影響

容量拠出金は、従量料金や燃料費調整額ほど目立ちませんが、2024〜2025年の制度変更で影響力が急激に高まりました。特に高圧・特別高圧の企業では、直接的に電気代総額を押し上げる要因になっています。

以下では、企業に具体的にどのような影響が生じるのかを整理します。

容量拠出金の増加により電気代の負担料が増える

容量拠出金が上がると、その分だけ企業の電気代の総額も増加します。
これは、容量拠出金が「使用電力量 × 単価」で決まるためで、電力を多く使う企業ほど負担が大きくなる仕組みです。

また、容量拠出金の単価は容量市場の価格に連動しているため、

  • 容量市場の落札価格が高い年度は、翌年度の容量拠出金単価も上がる
  • 前年の容量市場の結果が、そのまま翌年の電気代に反映される

という構造になっています。

近年は、老朽化した火力発電の維持費の増加、脱炭素化に伴う設備投資の負担、電源の確保が難しくなっていることなどが重なり、容量市場の価格が高止まりしています。

そのため、容量拠出金による電気代の負担は、今後もしばらく増加傾向が続くと考えられます。

容量拠出金増加の影響が大きい業種

容量拠出金は使用電力量に比例するため、以下のような稼働時間が長く・使用量が多い業種ほど影響が大きくなります。

◎影響が大きい主な業種

業種 影響
工場(製造業) 24時間稼働ラインがある場合、負担が極めて大きい
物流倉庫 冷蔵倉庫は特に使用量が多く、影響大
ホテル・宿泊施設 冷暖房・給湯など常時稼働の設備あり
医療施設(病院・クリニック) CT・MRI機器、空調、照明など常時稼働
ショッピングセンター・大型商業施設 冷暖房負荷+店舗数が多く電力使用量が大きい

◎中規模企業でも影響は無視できない

「自社は高圧の中では使用量は多くない」という企業でも、年間40〜80万kWhあれば、容量拠出金の単価次第では年間10〜30万円の負担増が起こります。

容量拠出金の計算方法(シミュレーションつき)

容量拠出金は、基本的に「どれだけ電気を使ったか」に応じて発生する費用で、次の計算式が一般的です。

容量拠出金は、多くの場合つぎの式で計算されます。

  • 容量拠出金 = 使用電力量(kWh) × 容量拠出金単価(円/kWh)

電気を使った分だけ金額が増える仕組みで、とてもシンプルです。
そのため、使用量が多い企業ほど負担が大きくなります。

ただし、電力会社によっては請求方法が異なることがあります。
一部では、使用量ではなく 「契約電力(kW)」に容量拠出金単価を掛ける方式 を採用しています。

  • 容量拠出金 = 契約電力(kW) × 容量拠出金単価(円/kW)

このように、計算方法の違いで負担額が大きく変わる ため、見積もりを比較するときは、容量拠出金が「従量制(kWh)」なのか、それとも「契約電力(kW)」なのかを必ず確認することが重要です。

基本料金・従量料金との違い(混同しやすいポイント)

容量拠出金は、よくある料金項目と目的が異なるため混同されがちです。下記のように費用の性質が違います。

項目 何に対する費用?
基本料金 契約電力に応じた設備確保費用
従量料金 実際に使用した電力量
燃料費調整額 火力燃料の価格変動に応じた費用
容量拠出金 供給力維持のための電源(発電所)の確保費用

つまり容量拠出金は、「電気そのものの代金」ではなく、安定供給を維持するための制度コストという性質を持っています。

電気代の増減を具体的に確認(シミュレーション例)

年間500,000kWhを使用する工場(高圧契約)を例に、容量拠出金単価が1.5円/kWh → 3.0円/kWh に上昇したケース を試算すると、年間負担増 = 500,000kWh × 1.5円 = 75万円となります。

これが複数拠点の企業であれば、総額はさらに大きくなり、年間100万円以上の追加負担 になるケースも珍しくありません。

前述のとおり、電力会社によっては「契約電力 × 単価」で請求される方式もあり、企業によっては負担額がさらに増える場合があります。

容量拠出金は削減できる?
電力会社選びでコストを抑える方法

容量拠出金は国が定める制度コストのため、「削減は不可能」と思われがちです。しかし、実際には電力会社がどのように容量拠出金を扱っているかによって、企業の負担額は大きく変わります。

容量拠出金の単価は全国共通ではなく、転嫁方法・電源調達力・請求方式・プラン設計といった要素が電力会社ごとに異なるためです。

容量拠出金の単価が電力会社によって違う理由

容量拠出金は制度としては共通ですが、最終的に企業が支払う金額は電力会社ごとに差があります。これは、各社が容量コストをどのように需要家へ反映させるか、またどのような電源調達体制を持っているかなど、複数の要因が関係しています。

1. 転嫁割合の違い

電力会社によって、容量拠出金の扱い方は大きく異なります。

  • 容量拠出金を そのまま100%転嫁する会社
  • 原価分だけを反映し、一部を自社で吸収して負担を抑える会社

など、対応はさまざまです。

また、容量拠出金は本来毎月変動するため、電力会社によっては単価を固定する代わりに、変動を見越して多めに設定して請求するケースもあります。

その結果、同じ使用量でも電力会社によって請求額が大きく変わることがあります。

2. 電源調達力による違い

発電所を保有している電力会社や、大手発電事業者と強い調達関係を持つ会社は、容量市場に依存する割合が低く、調達コストを抑えられる傾向があります。

一方、発電所を持たない小売専業の電力会社は市場調達に頼るため、市場価格の高騰がそのまま容量拠出金に反映されやすくなります。

3. kWh方式・kW方式による請求方法の違い

容量拠出金は、「使用電力量(kWh)で計算する方式」「契約電力(kW)で計算する方式」のどちらを使うかによって、企業の負担額が大きく変わります。

どの方式を採用するかは電力会社ごとに異なり、企業の負荷率(使用量の波の大きさ)によって有利・不利が分かれるため、この違いがそのまま単価差につながります。

特に 市場連動型プラン では、この方式を誤って選ぶと、「思ったほど電気代が下がらない」という事態になりやすいため、事前の確認が非常に重要です。

4. 料金プランの設計方針の違い

容量拠出金をどこに組み込むかは電力会社ごとに異なるため、同じ「固定単価型プラン」でも支払う金額が変わることがあります。

たとえば、A社は容量拠出金を従量料金にまとめて上乗せする方式です。
従量料金18円/kWhに容量拠出金2円/kWhを足して、請求書には 「20円/kWh」 と表示されます。
一見シンプルですが、容量拠出金が含まれていることが分かりにくいという特徴があります。

一方で、B社は容量拠出金を従量料金ではなく基本料金に含める方式をとることがあります。
たとえば、基本料金に3,000円を上乗せし、従量料金は 「18円/kWh」 のまま据え置きます。
単価は安く見えますが、基本料金が増えているため、総額ではA社とほぼ同じ、または高くなるケースもあります。

このように、「従量料金に含める」「基本料金に含める」という設計の違いだけで、見た目の単価も実際の支払い総額も変わってしまいます。
そのため、プラン比較では 容量拠出金がどの項目に含まれているか を必ず確認することが重要です。

容量拠出金が削減できないケースもある

大手電力会社の標準メニューでは、容量拠出金を「原価そのまま」で請求する方式が一般的です。この仕組みでは、容量市場の価格が上がると翌年度の容量拠出金単価もそのまま引き上げられ、企業の電気代に直接反映されます。年度内に単価が毎月変動するわけではありませんが、翌年度の単価は必ず容量市場の結果に合わせて改定されるため、企業側で抑えることはできません。

つまり、大手の標準メニューでは電力会社が容量拠出金を吸収したり調整したりする仕組みがなく、他社プランへ切り替えない限り、この部分のコスト削減は期待できません。また、契約条件に「容量拠出金は使用量×単価で別途加算する」と明記されているプランも同様で、制度に基づく単価がそのまま適用されるため、企業が料金を軽減できる余地はありません。

さらに、一部の新電力が提供する市場連動型プランでは、容量拠出金を毎月の市場価格に応じて計算し、そのまま原価で請求する方式もあります。この場合も原価ベースでの請求となるため、削減はできません。

容量拠出金が削減できる3つの方法

容量拠出金は制度コストである一方、電力会社の選び方によって削減できるケースは確実に存在します。

1. 容量拠出金を“原価で”提供する電力会社へ切り替える

電力会社によっては、容量拠出金を上乗せせず、国が定める実際の負担額のみで提供する会社があります。

この場合、余計なマージンが含まれないため、使用量の多い工場や複数拠点を持つ企業では、年間で数十万〜百万円規模の削減につながることがあります。

市場価格が高騰している年度でも、不必要な上乗せがない点も大きなメリットです。

2. 容量拠出金をプラン内に含めた“固定単価型”or“完全固定単価型”を選ぶ

固定単価型は、基本料金・従量料金・容量拠出金の単価を固定する方式が一般的です。契約期間中は市場価格がどれだけ上がっても電気代が変わらないため、急なコスト増を避けたい企業に向いています。

ただし、電力会社は将来の単価上昇を見越して価格設定をするため、リスクヘッジ分が固定単価に含まれる点には注意が必要です。また、年度更新の場合は翌年度の容量単価が上がればそれに合わせて固定単価も上がる可能性があります。

3. 企業の負荷率に合った請求方式を選ぶ

容量拠出金は「kWh方式」と「kW方式」の2種類があり、どちらを選ぶかで負担額が変わります。

負荷率が高い24時間稼働の工場やホテル、物流倉庫などでは、契約電力に比べて電力量が大きいため、kW方式のほうが割安になる傾向があります。

反対に、店舗や小規模オフィス、日中のみ稼働する工場など負荷率が低い事業所では、使用量に応じて請求されるkWh方式のほうが有利になるケースが多く見られます。

電力会社によっては、事前に負荷率を計算したうえで、どちらの方式が自社に適しているか選択できるプランも提供されています。契約前に「どちらの方式が自社のコスト構造と合っているか」を確認することが、容量拠出金の最適化には欠かせません。

契約の更新時期によって容量拠出金の提案の幅が変わる

容量拠出金は年度ごとに単価が変わるため、契約時期によって企業が受けられる料金プランの内容は大きく変わります。とくに翌年度の容量単価が上がる可能性がある場合は、年明け〜3月が見直しのチャンスになります。

その理由のひとつは、容量拠出金の単価が確定する前は、電力会社が「現行単価」または「暫定単価」をベースに見積りを出すことがあるためです。容量単価が正式に発表される前は、電力会社も確定コストを把握できないため、前年ベースの単価や暫定的な単価でプランを提示するケースが発生します。

こうした“単価決定前のタイムラグ”により、4月以降に実際の容量単価が上昇しても、契約済みの企業は契約時点の条件を年度内いっぱい維持できることが多く、結果として有利な単価で1年間運用できる可能性があります。

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